2021/10/18 05:00

旧民主系、2区に12年以来の候補 空白期間響き組織弱体化【連載断面 21衆院選とくしま】

 「徳島2区ではここのところ候補者を立てることができず、ご迷惑をおかけした。この度はどうしても、中野真由美さんを押し上げていただきたい」。9月下旬、立憲民主党徳島県連が泉健太政調会長を迎えて三好市で開いた街頭演説会の冒頭、庄野昌彦県連代表はこう声を上げた。

 徳島2区で自民と旧民主系の候補が戦うのは2012年以来となる。民主党が政権交代を果たした09年の衆院選で、旧徳島2区は民主の高井美穂氏が自民の山口俊一氏に勝利したものの、12年選挙は県内の民主候補が全員落選。14、17年選挙で旧民主系は徳島2区で候補を立てることすらできなかった。

 今回、立民は空白区を解消するため北島町議だった中野氏を擁立した。7月に開設した吉野川市の後援会事務所に県連事務所を移すなど、総力を傾けて支持拡大を図っている。

 ただ、旧民主は立民と国民民主に分裂し、両党間には野党共闘を巡る温度差がある。旧徳島2区で長年戦ってきた高井氏は県議を経て三好市長となり、今回は市長選で支援を受けた山口氏の事務所開きに顔を出した。2度の選挙での候補不在で組織は弱体化した。

 旧民主をけん引してきた仙谷由人元官房長官が18年に死去した影響も大きい。「かつては仙谷さんが自分の選挙区だけでなく県下を走って票をつくっていた。陣営も顔をつぶす訳にはいかないと必死だった」(元旧民主県連幹部)。

 党本部に委ねていた野党候補の一本化は実現せず、共産の久保孝之氏も立候補を予定している。

 そんな中、中野陣営が狙うのが保守票の切り崩しだ。19年4月の知事選から続く自民県連と徳島1区から出馬予定の後藤田正純氏との内紛は、県連会長だった山口氏にとってマイナス要因になるとの見方が強い。吉野川市やつるぎ町など旧徳島3区だった市町には、同区から選出されていた後藤田氏の支持者が多く、火種がくすぶる。

 「いつものように山口さんを応援できない」。後藤田氏を長年支持してきた吉野川市の自民党員の男性は険しい表情で語る。

 自民の元県議2人が争った19年10月の同市長選では、後藤田氏や三木亨参院議員が推す原井敬氏と、山口氏ら県連幹部の多くが支える樫本孝氏の一騎打ちとなり、保守層を二分した。しこりが残っており、この男性は衆院選への影響について「野党候補に投票する訳ではないが、棄権や白票を選ぶ人も少なくないだろう」とみる。

 また山口氏は、飯泉嘉門知事が衆院選に出馬した場合に行われる予定だった知事選に、比例特定枠で当選した三木氏が意欲を示し、特定枠を巡る混乱を招いたとして県連会長を辞任するなど、求心力低下もささやかれる。

 徳島2区では9年ぶりとなる野党第1党の立候補。さまざまな事情を抱えながら「政権選択」が問われる戦いとなる。

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