自民県連1区「自主投票」 職域支部や党員戸惑い【連載断面 21衆院選とくしま】
自民党徳島県連が14日に開いた衆院選の選対本部会議で、現職の後藤田正純氏が党本部から公認された徳島1区の対応について、党員ら個々の判断に任せる「自主投票」とする方針を決めた。複数の保守系候補がいる場合に自主投票とするケースはあるが、後藤田氏に対抗する候補がいない中、党本部と県連の対応が異なる異例の事態となっている。職域支部や党員にも影響が広がっており、「自民票」の行方が見通せない状況となっている。
「県連は徳島1区の公認申請を行っていない。党本部の決定をもって方針を変えることはしない」。徳島市の県連事務所2階で開かれた選対会議後、杉本直樹県連会長は淡々と会議結果を報道陣に説明した。
県連は後藤田氏の言動を問題視し、「県選出の国会議員にふさわしくない」と指摘。5月、党本部に公認しないよう申し入れて以降、自民県議が擁立を模索してきた飯泉嘉門知事が不出馬を表明しても、党本部が後藤田氏の公認を発表しても、対応に変化はなかった。
これに対して後藤田氏は、知事不出馬から公認申請しない方針の確認に至る経緯を踏まえ、街頭などで「負け犬の遠ぼえ」と県議らを批判。自主投票としたことを「党議決定に背くのは反党行為だ」とけん制し、両者の亀裂が埋まる様子はない。
県連の決定がどう影響するのか。青年局は「県連と同じ方向を向いていく」として、自主投票とする方針だ。ある職域支部の関係者は「県連の決定に沿う形になるだろう」と、1区では後藤田氏に推薦を出さない見通しを示す。別の職域支部は「誰かを応援することはせず、投票は個々の判断に任せる」とした。
一方、ある党員は「後藤田氏を熱心に応援してきた人の中には戸惑いはある。自主投票をどう捉えていいか難しい」と話し、党員の複雑な心境を代弁する。
「個々の判断」の投票行動がどこに向かうかは不透明だ。後藤田氏の他に立候補を予定しているのは日本維新の会新人の吉田知代、無所属元職の仁木博文、無所属新人の佐藤行俊の3氏。杉本会長は「1区で他の候補を支援するようなことはない」と話すものの、「自主投票は、後藤田氏を応援できないという意思表示」(県議)との強硬論も根強い。県連関係者からは「後藤田氏を批判する人たちの票が他候補に流れるのか、棄権するのかは分からない」との声も聞かれる。
影響は自民党内にとどまらない。連立与党を組む公明党との選挙協力について、県内ではこれまで公明が選挙区の自民候補を支援し、自民が比例の公明候補を支持する「バーター協力」を行ってきた。14日に公明が発表した他党候補の推薦者では、県連から依頼のあった徳島2区の自民前職山口俊一氏の推薦は決まったが、徳島1区の後藤田氏は含まれなかった。公明県本部として近く結論を出すとみられる。
2012年の衆院選以降、県内全小選挙区で勝利してきた自民は、複雑な状態で選挙に突入する。(政経部取材班)