2021/10/11 15:00

「衆院選とくしまのミカタ」(6)知事票の行方

 衆院選への出馬が有力視されていた飯泉嘉門知事が不出馬を表明し、日本維新の会が候補を擁立するなど、徳島1区を巡る状況が大きく変わってきました。知事を支持していた有権者の票はどこに流れるのでしょうか。キャップ、今の情勢は?

後輩記者)
 徳島1区の情勢が混沌(こんとん)としているようですね。

坂田キャップ)
 飯泉知事が出馬を断念したことで、立候補を予定しているのは4人となった。自民党現職の後藤田正純氏、日本維新の会新人の吉田知代氏、無所属元職の仁木博文氏、無所属新人の佐藤行俊氏だね。注目を集めているのは、飯泉氏の支持層が誰に投票するかということ。

 

後輩記者)
 興味深いですね。知事を擁立しようとしていたのは自民党県議だから、保守系の有権者が多いのでしょうか。

坂田キャップ)
 そうだね。だから、後藤田陣営の関係者は知事の不出馬を好材料とみているよ。飯泉氏が元自民党県議と戦った2019年の知事選の出口調査では、自民支持層の約6割、公明支持層の約8割が飯泉氏に投票したんだ。

後輩記者)
 では後藤田氏がかなり有利になりそうですね。

坂田キャップ)
 ただ、自民党県連の上層部を占める県議側と後藤田氏との溝は深い。10月6日にあった県連の常任総務会では、後藤田氏の公認を党本部に申請しないことを改めて確認した。後藤田氏のこれまでの言動から「国会議員にふさわしくない」として、5月に決定した方針を維持した形だね。

後藤田氏の公認を党本部に申請しないことを改めて確認した自民党県連常任総務会=10月6日

後輩記者)
 他に県連サイドの候補者がいない中、後藤田氏はどう受け止めているんですか。

坂田キャップ)
 後藤田氏は「普通に推薦されると思っていた」そうで、常任総務会を欠席した。県連の対応には「党員不在の決定だ」と批判しているよ。

県連を批判する後藤田氏=10月6日

後輩記者)
 歩み寄る気配はありませんね。

坂田キャップ)
 だから、飯泉氏を支持してきた保守系の票がどこまで集められるかは不透明で、後藤田陣営の関係者は「詳しい分析は難しい。影響を見極めながら戦い方を考えていく」と慎重な構えだよ。

後輩記者)
 仁木氏の陣営は知事の不出馬をどう捉えているの。

坂田キャップ) 
野党統一候補を目指す仁木陣営は、飯泉氏の支援者は後藤田氏に不満を抱いているとみて、票の取り込みに期待している。陣営幹部は「このまま現職を当選させていいのかという思いは、飯泉氏の支持者と同じ。(飯泉氏が不出馬を表明した)10月1日以降、保守層からも仁木氏を支持するという声が大きくなった」と手応えを感じているよ。

後藤田氏に不満を持つ人に支援を訴える仁木氏=10月11日
 

後輩記者)
 保守が分裂する状況で、自民と連立を組む公明党の動向も気になります。

坂田キャップ)
 公明党は、これまで選挙区と比例で支援し合う「バーター協力」を自民と続けてきた。公明にとっては比例代表四国ブロックの議席を守るのが目標。今回は自民県連から1区候補者の推薦依頼がない状況に対し、公明関係者は「まだ何も決まっていない。今後の協議で対応を決める」と言っているよ。

後輩記者)
 吉田氏は、日本維新の会が県内の選挙区に立てる初めての候補者ですね。

坂田キャップ)
 維新は2017年の前回衆院選の比例で、1区内の12市町村から1万903票を獲得している。選挙区でも一定の得票を得るとみられ、情勢を複雑にしている。吉田陣営の関係者は「維新の支持者は、後藤田氏の支持者と重なる部分が大きい。仁木氏より後藤田氏が影響を受けるのではないか」と分析しているよ。

後輩記者)
 後藤田氏と仁木氏の側はどうみているの。

坂田キャップ)
 後藤田氏の陣営は、吉田氏が保守的な主張をするか野党の立場を強調するかで有権者の動きが変わるとみている。仁木氏の陣営は「野党票が分散する恐れがある」と危機感を持っている。ただ、どちらにより大きな影響があるか、まだはっきりとは見通せない状況だね。

徳島1区に初めて立候補し、知名度向上を目指す吉田氏=10月4日

 

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