「衆院選とくしまのミカタ」(5)飯泉嘉門知事、なぜ出馬せず?
衆院選への出馬が取り沙汰されていた飯泉嘉門知事が、10月1日の県議会本会議で不出馬を表明しました。直前まで立候補の意思を固めていたようなのに、一転して見送ったのはなぜ? 何があったんですか、キャップ。
後輩記者)
飯泉知事は衆院選に出ないそうですね。県議会では何と発言したんですか。
坂田キャップ)
知事は徳島1区への立候補について、「熟慮した結果、総選挙には出馬せず、知事職に全力で取り組むことを表明する」と述べ、見送る考えを明らかにしたよ。
後輩記者)
「知事では限界がある」とまで県議会で答弁し、意欲をにじませていただけに驚きました。どんな経緯があったんですか。
坂田キャップ)
実際、知事はこの日の朝には出馬を決意し、立候補の意向を支援者らに電話で伝えていたよ。県議会の場で表明しようと、「出馬する」と書いた原稿も用意していたようだ。だけど、県議会本会議の開始前に自民党県議から思いとどまるよう説得を受け、土壇場で一転させたんだ。この影響で開始時刻が2時間ほど遅れた。
後輩記者)
知事に国政転身を促してきたのは自民党県議ですよね。それがなぜ。
坂田キャップ)
背景には、飯泉氏が衆院選に出馬した場合に行われる知事選に、三木亨(とおる)参院議員が意欲を示していたことがあるよ。飯泉氏サイドは後継として県出身の女性官僚を擁立しようと準備していた。飯泉氏と自民党現職の後藤田正純氏らと戦う衆院選徳島1区だけでなく、知事選も保守分裂の激しい選挙戦が予想され、何とか避けたいとの思いがあったようだ。
坂田キャップ)
県出身の女性官僚より、知名度で勝る三木氏が有利との見方もあり、最近は慎重論が強くなっていた。そんな中、最後の最後で知事が説得に応じたという訳なんだ。落としどころとして、他会派が提出した知事職にとどまるよう求める決議案に自民党県議が賛成し、知事の体面を保つ形を取った。だけど、知事は悔しかったに違いない。
後輩記者)
対立する後藤田氏に知事をぶつけようとしていた自民党県議も無念だったでしょうね。
坂田キャップ)
県議にとっては、三木氏が比例代表の特定枠で当選していることもネックだったんだ。特定枠というのは、合区対象県の現職を救済するために自民党が主導して創設し、2019年の参院選から導入された制度。党利党略と批判されながら法改正したのに、三木氏が辞職すれば特定枠で得た徳島の代表がいなくなってしまう。そんな事態になれば、自民党県連として申し訳が立たない。それは絶対避けないといけないという思いもあったようだ。
後輩記者)
なるほど。知事の出馬がなくなったことで、徳島1区は後藤田氏と元職の仁木博文氏の一騎打ちになるんですか。
坂田キャップ)
日本維新の会が元丹波篠山市議の吉田知代氏の擁立を決め、4日に出馬会見をしたよ。三つどもえの戦いになりそうだ。ただ、衆院選の投開票まで1カ月を切っており、有権者に浸透するのは簡単ではない。吉田氏の参戦が、後藤田氏と仁木氏にどう影響するか、目が離せないね。