「衆院選とくしまのミカタ」(3)知事の出馬は仁木氏にどう影響
徳島1区では、自民現職の後藤田正純氏に旧民主系の元衆院議員・仁木博文氏が挑む構図が長年続いてきました。そこに、飯泉嘉門知事が出馬すれば、票の行方はどうなるのでしょうか。キャップ、見通しは?
後輩記者)
「第2話」までで後藤田氏と飯泉知事を巡る保守系の対立はよく分かりました。徳島1区には元衆院議員の仁木氏も立候補するそうですね。どんな人ですか。
坂田キャップ)
仁木氏は2003年の衆院選で民主党から初めて出馬し、リベラル勢力の支援を受けて後藤田氏と議席を争ってきた。民主党が政権を奪った09年の衆院選は、当選した後藤田氏に1222票差まで迫り、惜敗率によって比例四国ブロックで初めて復活当選したよ。だけど民主党は12年の衆院選で敗れて下野し、仁木氏も落選した。
後輩記者)
その後も仁木氏は旧民主系から出馬しているんですか。
坂田キャップ)
前回、2017年にあった衆院選の動きを振り返るね。当時、民主党と「維新の党」が合流した「民進党」は、選挙の直前、小池百合子都知事が率いる「希望の党」との連携に踏み切った。希望か無所属かの選択を迫られた仁木氏は「小池旋風」に乗り、希望から出馬したんだ。だけどその選択がきっかけで、原発や安保法制に反対してきた市民団体などが仁木氏から離れてしまったという経緯があるよ。ちなみに、小池知事に「排除」された民進議員が「立憲民主党」を立ち上げたんだ。
後輩記者)
今回はどの政党から出馬するの。
坂田キャップ)
仁木氏は立憲民主党の公認候補として出馬するよう打診された時期もあったけど、結局見送った。無所属候補として保守票を取り込むのが狙いなんだ。つまり、これまで以上に幅広い支持を集めたいってことだよ。
後輩記者)
全国では自民・公明の与党に対抗し、野党で候補者を一本化する動きが進んでいますね。
坂田キャップ)
前回の衆院選では、仁木氏と共産党候補の得票数を合わせると、後藤田氏に約5000票差まで迫ったんだ。今回、仁木氏も野党共闘候補を目指しているんだけど、前回選のしこりもあって調整が遅れている。
後輩記者)
ところで、仁木氏の後援会事務所の前を通ると、「ワクチン接種会場」と書いた看板が掲げられていました。どういうことですか。
坂田キャップ)
仁木氏は医師として、新型コロナのワクチン接種も実施しているからなんだ。政府与党のコロナ対策を批判していて、「医師として現場を知る私に仕事をさせてもらいたい」と訴えているよ。
後輩記者)
もし飯泉知事が出馬すれば、保守層が分裂しますよね。
坂田キャップ)
確かに、自民党現職の後藤田氏と、自民県議が支持する飯泉氏で保守票が割れることになる。仁木氏はそれを意識してか、街頭演説や事務所開きのあいさつで、「大阪でも東京でもなく徳島が地元の代議士がみなさんの手となり足となり、徳島を元気にしていきたい」と力説していた。大阪出身の知事と東京生まれの後藤田氏へのけん制だね。
後輩記者)
じゃあ仁木氏にとって有利になるの。
坂田キャップ)
いやそうとも言い切れない。自民県議が推しているとはいえ、無所属の知事はこれまで非自民、非共産の有権者にも支持を広げてきた。だから、仁木氏と支持層が重なる部分もあって、知事が出馬すれば仁木氏にとってプラスになることばかりではない。それに、後藤田氏と知事の争いが激しくなればなるほど、仁木氏の存在感が埋没するとの見方もある。
後輩記者)
仁木氏はどう捉えているの。
坂田キャップ)
仁木氏は今回の衆院選を「コロナ選挙」と表現しているんだ。コロナ対策を巡って現政権に逆風が吹く中、野党共闘候補として後藤田氏との一騎打ちに持ち込めれば、これまでより有利に戦えると考えていたようだよ。知事の出馬は歓迎していないんじゃないかな。