2021/10/01 15:00

「現状でいいのか、嫌なのか。まずはそこ」選挙の啓発をする徳島大の学生グループ「TYME」共同代表 堀井麗以さん(22)

撮影=山田旬

 徳島大総合科学部4年の堀井麗以さん(22)は選挙の啓発活動をする徳島大の学生グループ「TYME」共同代表の一人。コロナ下で活動がままならない中、県内の地方議会の議員との勉強会を開くなどしてきた。徳島県内で生まれ育ったが、米国人の父、日本人の母をもち、家庭内は多文化、多言語。そんな堀井さんにとって今の徳島はどう映るのか。また、今秋の選挙で、何を投票の判断材料にするのだろう。

―徳島大総合科学部に進学したのはどうしてですか。また、TYMEに入ったきっかけは。
 
 徳島北高校の国際英語科で学んだんですが、ALTら外国人講師による英語の授業も多かったんです。外国の先生は世の中で起きていることについて、すごくしゃべるんですね。それで、社会問題に目が向いていきました。  

 進路を決めるときに考えたのは、一つのことだけを勉強しても世の中の問題は解決できないんじゃないかということ。だからリベラルアーツ的なことを学び、知見を広げてみようと思いました。大学を調べてみると、徳島大と広島大に総合科学部がある。「徳島を出たい」と言って進学で出る人もいるけれど、僕はそうした気持ちはなかった。そのまま住んでいた徳島で進学する道を選びました。

 高校時代はちょうど安保法案が可決されたり、改憲の発議が現実味を帯びたりした時期でした。徳島大で開かれていた憲法食堂(さまざまな人が憲法について話し合う場)に参加したことがあります。そこで、TYMEの活動を支えている饗場(あいば)和彦先生(政治学)と知り合いました。3年生になって饗場ゼミに入り、TYMEの活動も始めました。

 
―お父さんは米国人だそうですね。米国人としてのアイデンティティーはありますか。
 
 あるにはあるけれど、どうかな…。アンジェラ・アキさんが「アイデンティティー・クライシス」になったという話を聞いたことがありますが、僕はあまりそういう経験はない。「国」という枠にはとらわれていませんね。

 昔は初対面の人からルーツについてよく聞かれましたが、最近は聞かれることが少なくなった。いろんなルーツの人がいるのが当たり前になって聞かない、というのならいいんですが、みんなが気を使って避けているなら、それはそれで不自然かな。

 妹が3人いて、1人は日本にいますが、2人は米国で教育を受けることを選びました。祖母の家にいます。ワシントン州のシアトル郊外なので、リベラルな土地柄の場所です。ただ、だからと言って、そこに住んでいるみんながリベラルかと言えば、個人によって違う。家庭内で多文化、多言語が当たり前。そういう環境で育ったので、価値観の形成には影響しているかなと思います。周囲に染まることもないし、意見が違う人に対しても、いろんな人がいるんだな、と結構ドライに見ていますね。
 
―徳島は住みやすいでしょうか。
 
 そうですね。そもそも住みやすいのか、ただ自分が住んでいるから住みやすいのかは分かりませんけど。特別、「嫌い」という感情はなくて、進学を機に出て行きたいとも思わなかった。就職活動でも、県内での就職を考えていました。周囲からは「若い頃はいろいろ経験をした方がいい」と言われもしましたが。ただ、就職活動の結果、県外で働くことになりました。転勤はあり、徳島も対象地域には入っていますが。

 徳島の場合、就職先、進学先が限られるというのが若い人が出ていく理由になっているように思います。
 
―徳島県も県内市町村もUターン就職する人の奨学金返済を支援するなどいろんな若者定住施策をしていますよね。
 
 携帯電話会社のサービスみたいだと思っていて(笑)。新規顧客、つまり新たに来る人へのサービスは手厚いけれど、既存顧客、ずっとそこにいる人には何もしない。すべきなのはそういうことなのかな、とちょっと疑問に思います。

 少なくない若い人が徳島に「残りたい」「残ってもいい」と思っているんじゃないでしょうか。昔みたいに誰もが東京など都会に憧れる時代でもない。特に今のコロナ下では「東京に住むのはどうか」と思う人もいるかと思います。でも、就職先が限られるなどで、残れない現実がある。みんなが出て行きたくて出て行っているわけではないと思います。
 
―衆院選では、何を判断材料に投票先を選びますか。
 
 現状のままでいいのか、嫌なのか。国政の場合、議員は党に所属しているので、個人を見るのがちょっと難しいところがありますよね。だから、まずはここが判断基準になると思います。TYMEの活動の中でも、そういつも話しています。

 僕は自民党が「1強」と言われる時代に高校、大学生活を過ごしました。でも、本当はいつ野党にとって代わられるか分からないという緊迫感、緊張感がある中で政権運営をするのが望ましい。たぶんそれがないから、公文書改ざんや「政治とカネ」の問題など、民主主義の前提を覆すことが起きてきた。それってどうなんだ、って思います。「政治ってそんなもの」なんて言われたりもしますけど、それを当たり前にしてはいけないと思うし、当たり前になってほしくない。民主的な人にリーダーになってほしい。

 あとは、普通に生活している僕らの感覚が分かる人に投票したい。例えば、今のコロナ下で、「少しの犠牲は容認しないと仕方ない」というスタンスの人は嫌だな、と思います。

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